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映画『2001年宇宙の旅』:人類はどこから来て、どこへ行くのか。無限の可能性を秘めた、未知への旅に出よう。

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デイジーデイジー・・・!さとる(@satorism0321)です!

「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」というタイトルの名画(ポール・ゴーギャン作)もあるように、「人類の起源」について想いを馳せる方も少なからずいると思う。

本当に進化論は正しいのか?
ひょっとしたら創造論や、ID(インテリジェント・デザイン)説もアリなんじゃねーの?などなど。

非科学的でオカルティックなお話になると、すぐムキになって否定する方々もおられるけれど、仮にどっかの異星人がぼくらの祖先をイジっていたとして、ぼくらの「今」が変わるわけでもなし。
大人ならばロマン溢れる与太話として、受け取れる余裕と度量は欲しいものである。

というわけで、今回はそんな地球外の存在もあるのかもなーって映画をご紹介する。

 

比類なき完成度を誇る、SF映画の金字塔。

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『2001年宇宙の旅』(原題:"2001: A Space Odyssey") 1968年アメリカ
オススメ度:★★★★★

鬼才スタンリー・キューブリック監督作品。
月面に埋まっていた謎の物体「モノリス」を発見したことによる、人類の起源と進化を巡るSF映画。

「完璧主義者」の異名を持つキューブリック作品の中でも、とりわけやべーのがこの映画なんじゃないかと思う。
キューブリック作品はほぼすべて見たけれど、やはりこの「2001年」が衝撃的かつスリリングで、ぼくの一番好きな作品である。

と同時に、「何がなんだかよくわからない」難解な映画でもある。

だがそこがいい。

まったくと言っていいほど説明がなく、序盤20分はサルがウホウホ、終盤に至っては30分近くまったくセリフがないという、予備知識なしで観たならばまったくワケがわからず、退屈極まりない映画と感じるかもしれない。
SF映画の傑作として絶賛される一方で、観る人によっては★1評価もありうる極端な映画なんじゃないかと思う。

とはいえ、アポロ11号が月面着陸を果たすよりも前に製作されたこの映画、当時の科学レベルにおいての徹底的な考証とキューブリックの完璧主義が(良くも悪くも)融合し、未だかつて人類が体験していない「宇宙の旅」が見事な演出と映像表現で描かれているのは必見。以降半世紀を経てもなお、「SF映画の金字塔」として絶賛され続けているのもうなずける。

また、本作のあまりの完成度ゆえ、後年のアポロの月面着陸映像は地球上でキューブリックが製作したんじゃねーのという「捏造説」が今でも度々話題になるほどだ。

「この映画を観ずして、SF映画を語ることなかれ」と、ぼくは断言できる。

原作は4部作

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原作は20世紀を代表するSF作家、アーサー・C・クラークによる4部作の内の第1作目。

キューブリックが「語り草になるようなSF映画を作りたい」と、クラークに申し出たことがきっかけで執筆されたのが本作だが、一応クラークの短編「前哨」という作品がベースになっているようではある。
ぼくはまだ『2001年』しか読んでないけど、小説版もめちゃくちゃ面白い。

古い作品ながら、とても読みやすい文章なので、SF初心者にもオススメしたい作品。

決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)

決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)

 

続編にあたる「2010年宇宙の旅」は、1984年に「2010年」というタイトルで映画化されている(主演はロイ・シャイダー!)
哲学的で難解な本作とは違い、SFエンタメとして楽しめるので興味のある方はぜひ。

 

ちなみにクラークが存命である頃、最終章である「3001年終局への旅」をトム・ハンクスが映画化するような話があったはずなんだけど、結局なくなったんですかね。
2014年にもリドリー・スコットがTVドラマ化すると言っていたけれど、こちらもどうなったんでしょうかね。

まぁ適度に期待して待つことにしましょう。

登場人物紹介

デヴィッド・ボーマン船長 / キア・デュリア

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本作の主人公の一人。
ディスカバリー号の船長として、木星ミッションに挑む。

現代でも通用するイケメン顔だと思うのだけれど、皆さんはどうだろうか。

フランク・プール / ゲイリー・ロックウッド

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ディスカバリー号のクルー。
本作では影は薄めであるが、最終作である『3001年終局への旅』で登場する模様。

原作は買ったまま積んであるので、よくは知らない。

ヘイウッド・R・フロイド博士 / ウィリアム・シルベスター

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月面で発見されたモノリス、通称「TMA・1」調査隊の中心人物。
本作におけるフロイドはジジくさい人だが、続編映画『2010』ではオットコ前に変貌するのはご愛嬌。

ちなみに、画像は宇宙ステーション5から地球に電話をするシーンだが、画面に写っている少女はキューブリック監督の実の娘である。

モノリス

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400万年前の原初の時代、地球上に突如現れた謎の黒い物体。各辺の比は1:4:9。
アフリカに生息していたヒトザルに、知的生命としての進化を促した。

劇中では触れられないがアフリカにあったものをTMA・0、月面で発見されたものをTMA・1(ティコモノリス)、木星と衛星イオの第1ラグランジュ点にあるものをTMA・2と呼ぶ。
TMAとは、"Tycho MAgnetic Anomaly"(ティコ磁気異常)の略で、月面のティコクレーターにて磁気異常を検知して発見されたことに由来する。

ちなみに原作ではTMA・0は透明という設定だが、映画ではアクリルの透明度が高く出来ずに断念した・・・と以前聞いた気がするけれど、記憶が定かではない。

登場メカニック

ディスカバリー号

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木星ミッションのために建造された宇宙船で、乗員は5名(ボーマン、プールを除く3名は人工冬眠中)。

不思議なデザインの宇宙船だけど、そのモチーフは精子なんだそうな。

HAL9000

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ディスカバリー号に搭載された人工知能で、船内におけるすべての制御を行う。

ちなみにHALとは、世界的なコンピュータ企業である「IBM」の文字を1文字ずつ前にずらし(H←I、A←B、L←M)、「一歩先を行くコンピューター」という意味であるという説があるが、原作のクラークや監督のキューブリックはこれを否定している。

原作では"Heuristically programmes ALgorithmic computer"の略となっている。

スペースポッド

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ディスカバリー号に格納されている、船外作業用のスペースポッド。
中に人が乗り込んで作業を行う。

初代『機動戦士ガンダム』に出てくる、ボールはこのポッドをモデルにしてるんじゃなかろうか。いや、アームとかそっくりだし。

宇宙ステーション5

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地球から月へ向かう際の中継点となる宇宙ステーション。

リング状のものが2つ組み合わさった形をしているが、後ろのリングはまだ建造中かと思われる。

地球からの往還機である、オリオン3型宇宙機がこのステーションから発進していくアートワークが映画ポスターとして使用されているので、そちらで覚えている方も多いかと思う(現在購入できる原作小説のジャケットにも使用されている)。

さとる的おすすめポイント

美しいオープニング

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月・地球・太陽が直線状に並ぶこのタイトルバックは、1896年にリヒャルト・シュトラウスによって作曲された交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』の第1部「導入部」が使われており、現在でもCM等でたびたびオマージュされている。

何度観ても本当に美しい。
ぼくの中では、映画史上最も好きなオープニングかもしれない。

ちなみに「ツァラトゥストラ」とは、紀元前6世紀頃に興った「ゾロアスター教」の開祖ゾロアスターのことをドイツ語読みしたもの。
「ツァラトゥストラはかく語りき」とはドイツの哲学者であるフリードリヒ・ニーチェの著作で、この交響詩はそれをイメージして作曲されたもの。

さらにちなむと、ここで使用されているのはヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ウィーン・フィルの演奏によるもの。音源を探す方は参考までに。
ぼくはそれを知らずに違う演奏版を買い、がっかりした思い出がある。

原初の夜:人類の夜明け

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人類がまだヒトザルだった400万年前から、この映画は始まる。

彼らの生活っぷりや、縄張り争いなどが描かれているんだけど、
20分くらいウホウホやってるわけよ。
それをぼんやりと観ているのは、はっきり言って退(略
最初借りて来たときは、「猿の惑星」と間違えたんかと思ったぜ。

その後、突如現れた謎の物体・モノリスに触れて進化を促されることになるのだけど、つまるところこの映画の世界観では「人類は地球外の存在により知性を与えられた」ということになる。

実際はどうなんでしょうね。進化論は本当に正しいのでしょうかね。

で、骨を武器として用いたヒトザルが縄張り争いに勝ち、勝利の雄叫びと共に空中に骨を投げるのだけれど、この骨が一瞬にして数百万年後の宇宙を飛ぶ船へと切り替わる「ジャンプ・カット」は必見。

人類が手にした"道具"が、形を変えて宇宙にまで進出するテクノロジーとなったことを一瞬で表現している。

TMA1:月面にて

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月面のクラビウス・クレーターにある基地に赴いたフロイド博士は、ティコ・クレーターで発見された謎の物体(TMA・1)を調査するために現地へ向かう。

このシーンの不気味さは異常で、音楽もめっちゃ怖い。
おしっこチビりそうになる。

そして、発掘されたTMA・1は太陽光を受けた直後、謎の電波を発し始めるのである。

ちなみにクラビウス・クレーターは表側の月面では最大のクレーターで、直径約225kmという大きさ。
ティコ・クレーターは直径85kmで、クラビウス・クレーターからは数百マイルの距離なんだそうな。

惑星と惑星のあいだで:木星探査

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TMA・1から発信された謎の電波が示した場所を目指し、ディスカバリー号に乗り組んだ5名(内3名は人工冬眠中)は木星探査のミッションに就く。

真空状態の宇宙を表現するため、レンズを最大限に絞って撮影されたシャープな映像、船全体の制御を行う人工知能・HALの反乱、音のない漆黒の宇宙に放り出される恐怖、HALを強制的に停止させるシーンなど、見所いっぱいのシークエンスである。

HALが反乱を起こす理由は「矛盾する内容の命令を抱えたため」とされているが、今後人工知能が進歩していくに当たって、現実にも起こりうる事態なんじゃなかろうかと思わせる。
そういった意味では、今から半世紀も前に予見していたクラークの洞察力には感服する。

また、木星圏に到着し、TMA・2を調査するシーンはめちゃくちゃ不気味である。
ここを観る度に、本当にすげぇSF映画だなと心底思う。

スター・ゲートを抜けて

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木星と衛星イオの第1ラグランジュ点に浮かぶ「TMA・2(モノリス)」と邂逅したボーマンは、スター・ゲートと呼ばれる光の通路を抜け、謎の部屋へとたどり着く。

めっちゃ金持ちの家にある家具みたいなの(ロココ調)が並んでる、白くて不気味な部屋なんだけど、
この部屋がとても美しい。

この謎の部屋の正体は、モノリスの発する電波を追って(進化して)木星まで辿りつき、スター・ゲートを抜けてやってきた人類を歓待するためのホテルといったところ。
ボーマンはこの場所で急速に老い、人類の次なる進化「スター・チャイルド」へと新生することになる。

ちなみに「ロココ」とは、18世紀のフランスで始まった美術様式のことを指す。

映画を彩るクラシック音楽たち

映画全編に渡って効果的に使用されているクラシック音楽の数々を、以下にご紹介する。

  • 『アトモスフェール』:リゲティ・ジェルジュ
  • 『ツァラトゥストラはかく語りき』:リヒャルト・シュトラウス
  • 『レクイエム』:リゲティ・ジェルジュ
  • 『美しき青きドナウ』:ヨハン・シュトラウス2世
  • 『ルクス・エテルナ』:リゲティ・ジェルジュ
  • 『アヴァンテュール』:リゲティ・ジェルジュ

などが使われている。
現代音楽の作曲家であるリゲティの楽曲が最も多く、4曲が使用されている。

キューブリックは当初、過去作のスコアを担当していた作曲家に依頼していたが、すべて没にし、クラシックに差し替えたという経緯がある。
元々のスコアだったらずいぶん印象が変わっただろうなぁと思いつつ、どんなスコアだったのかもちょっと興味があるところ。

本当の目的地は土星

原作小説版『2001年宇宙の旅』の目的地は、映画とは異なり土星の衛星ヤペタス(イアペトゥス)となっている。
映画も当初は土星の予定だったのだけれど、当時の特撮技術では映像化できないと判断され、木星へと変更された。

キューブリックの意思は本作公開から46年後の2014年、クリストファー・ノーラン監督によるSF映画『インターステラー』で結実する。
この映画は『2001年』のオマージュが随所に散りばめられており、主人公たちが乗る宇宙船の最初の目的地は土星である。

最後に

SFはもとより、映画史を語る上で絶対に外せない作品である『2001年宇宙の旅』。

この記事の最初でも書いたように、説明やセリフが極端に少ないため非常に難解な映画となっているが、演出と映像表現は半世紀を経た今でも色褪せることがなく、キューブリック監督のこだわりを強く感じる作品である。

さぁ進入口を開けて、未知への旅に出よう。
ぼくたちは、いつだってワクワクできる。

最後に予告編をどうぞ!

www.youtube.com