★ さとりずむ ★

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映画『この世界の片隅に』:昭和20年、広島・呉。わたしはここで生きている。

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はいどーも!さとる(@satorism0321)です!!

今日の映画は『この世界の片隅に』!
太平洋戦争中の本土での日常を描いた作品として、2016年の邦画シーンにおける映画賞を席巻した大ヒットアニメーションです。

たかがアニメと思ってはいけません。
アニメの枠を超えた、珠玉の映像作品
であると思っています。
深いです。観るたびに新しい発見があります。

これは、激動の時代を生きた、強い日本人たちの物語。

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この世界の片隅に、うちを見つけてくれてありがとう。

作品紹介

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『この世界の片隅に』

監督:片渕須直
原作:こうの史代
公開:2016年
上映時間:129分
声の出演:のん ほか

あらすじ

太平洋戦争真っ只中の昭和19年(1944年)2月、広島・呉にある北条家へと嫁いだ主人公・すず。
物資の不足、食糧難、度重なる空襲、原爆投下、そして大切な人との別れを経験し、傷付きながらも懸命に生き抜く彼女と、その家族の姿を描く。

戦争を題材にした映画というと、多くの場合は兵士を主役に据えることが多いけれど、本作の主人公は(ちょっと天然気味の)普通の女性であり、舞台も戦場ではなく、一般家庭における日々の風景となっています。

そう、この作品は、
(戦争のある)日常系アニメ
なのです。

映画賞を総ナメ

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この映画の原作は、こうの史代による同名コミック(双葉社刊)
映像化にあたり、クラウド・ファンディングによって制作費が調達されたことも話題となりました。

日本中で「君の名は。」ブームが巻き起こっていた頃にひっそりと公開された本作。
SNSや口コミでその評判が広がり、最終的にその年の映画賞を総ナメにしてしまったというレジェンド。

ぼくは『夕凪の街 桜の国』(2004年)の頃からこうの先生の大ファンであり、本作の映画化が決まったときは嬉しい反面、正直不安も大きかったです。
というのも、このアニメ化よりも先に作られた北川景子主演の実写ドラマ版が存在したのだけれど、それがあまり褒められたデキではなく・・・またもや原作のイメージをぶち壊してしまうんじゃないか、と色々不安でしたね。

しかし、実際に鑑賞してみると、
「期待値をはるかに超えた」完成度
でした。

単に心に残る物語としてだけでなく、戦時下における一般家庭の様子を描いたこの映画は、大切な資料としても今後語り継がれるべき作品のひとつとなるんじゃなかろうか。

本作の見どころ

プロローグ

物語は、主人公すずの幼少期から始まります。

ここでは、

  • 昭和8年:海苔を届けに行く途中で「ばけもん」にさらわれる話
  • 昭和10年:草津の祖母の家で、天井から見知らぬ子どもが降りてくる話
  • 昭和13年:海難事故で兄を失ったばかりの同級生・水原哲に絵を描く話

の3つのエピソードがプロローグとして描かれております。

一応本編への伏線となりますが、まぁ分からなくても大丈夫です。
3つの中でも特に昭和13年のエピソードはとても美しく映像化されております。

すずさん、嫁ぐってよ

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(C)こうの史代 / この世界の片隅に制作委員会

3つのプロローグを経て、18歳になったすずが呉の北条家へ嫁ぐところから本編は始まります。

18って言ったら高校3年やぞ!?
舟木一夫もびっくりだわ(古い)

すずは縁談を持ち込まれ、初めて会った男(!)と結婚することになるのだけど、当時は普通のことだったのでしょうかね。

わずか18歳でお嫁に行き、いきなり家のことをすべて任されるなんて相当の苦労があったんだろうなぁ。
しかもよく知らない男といきなり結婚できるもんなのかな?今ではちょっと考えられないですねぇ。

しかもイヤミな義姉がいるし・・・

生きるために食べる

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(C)こうの史代 / この世界の片隅に制作委員会

この作品の見どころの一つは、戦時下における一般家庭での暮らし。
従来の戦争映画ではなかなかお目にかかれない、一般市民の生活ぶりが描かれております。

配給制なので常に物資に乏しく、そこらへんに咲いている野草も食料にしちゃう。
実にたくましい。インスタ映えなんて当然ない時代なので、見映えなどなく、ただ「生きるために食べている」ということをひしひしと感じます。

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(C)こうの史代 / この世界の片隅に制作委員会

その中でも印象に残っているのが、少ないお米を無理やりかさ増しする「楠公飯(なんこうめし)」。

鎌倉時代の武士・楠木 正成(くすのき まさしげ)が考案したとされる節米料理なんだけど、食糧難だったこの時代でさえ不味かったようですなぁ。

インスタにアップしたら食べ物を捨てる。食えなきゃ捨てる。
そんなことが当たり前にされてしまう、そういう時代に現代の我々は生きています。
こういった映画を通じて、現代人も食のありがたさを改めて感じて欲しいものです。

みんなが笑って暮らせたら

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(C)こうの史代 / この世界の片隅に制作委員会

とかく日本の戦争映画というものは、敗戦国というネガティブなイメージが付いて回るせいか悲惨さを前面に押し出しすぎで、「ハイ!ここ!ここ泣きどころですよ!!」みたいな演出が多いと常々感じております。

本作はというと、戦時下でありながらも非常にユーモアのある「日常」が描かれています。
原作のこうの氏がインタビューで「戦争中でも笑いはあった」と仰っていた言葉通り、およそぼくらが考えていた戦時中のイメージとは違い、登場人物たちはよく笑っている。中盤まではコメディといってもいいくらいの演出です。

しかし中盤以降、戦争が熾烈さを増していく中で次々に起きる悲劇についても、割と淡々としているのがすごく恐怖で。
辛いんだけど、みんな口に出さない。本当は感情を押し殺しているだけなんですよね。言ってしまったら生きていけないんです、たぶん。悲しくて。だから出来るだけ笑ってごまかしている。

あぁ、これが「戦争」なのだなと感じます。

どんなことが起きようと、
残った者で生き続けなければならない
ということを皆が理解しているのでしょう。

劇中、すずの義母のセリフに「みんなが笑って暮らせたらええのにね」とありますが、つくづくそう思います。
この時代を生きた人たちは、本当にたくましかったのだなぁ。

日常を切り裂く「戦争」

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(C)こうの史代 / この世界の片隅に制作委員会

当時の呉といえば、戦艦大和を建造した「東洋一の軍港」。

日本海軍にとって重要な軍事拠点であったこともあり、米軍によって複数回に渡り空襲を受けています。
本作中盤までは、苦労はありながらも笑いのある日々に「戦争」を感じさせなかったけれど、硫黄島が陥落した1945年3月以降は状況が一変し、突如「戦争」の恐怖が日常を支配していく。

空襲シーンの迫力はすごいの一言。
着弾時の衝撃は防空壕内でも凄まじく、アニメなのに十分怖いです。この恐怖を、あれだけの回数味わったのならば、本当に生きた心地はしなかっただろうなぁ。

また、空襲が始まる辺りからテロップとして日付が出始めます。
これは度重なる空襲の数を示したものである他に、広島にとっての運命の日である、
「8月6日」
に向けて、カウントダウンしているかのように思えます。

終戦を迎えて

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(C)こうの史代 / この世界の片隅に制作委員会

ぼくがこの作品で最も心苦しくなるシーンは、玉音放送を聞いた直後のところ。

周りの女性が口々に「やっと終わった」と呟くなか、すずが発する言葉がとても印象に残っています。

・・・何で?
そんなん覚悟のうえじゃないんかね?
最後のひとりまで戦うんじゃなかったんかね?
いまここへまだ五人も居るのに!
まだ左手も両足も残っとるのに!!
うちはこんなん納得出来ん!!!

『この世界の片隅に』下巻より引用


もちろん、彼女が戦争継続を望む好戦的な性格だったわけではないでしょう。

大切な人たちを失ったすずにとって、苦しい生活を耐え、「自分なりに戦い続けること」で傷付いた心を誤魔化し続けていたんじゃないかと思うし、どこかの誰かが勝手に始めた戦争に自分たちを巻き込んでおいて、勝手な言い訳で戦争を終わらせようとしたことに腹が立ったのだろうとぼくは解釈しております。


最後に、もう1つ好きなセリフを。

映画ラストでの義姉・径子のセリフがめちゃくちゃいいです。
「去年の晴美の服じゃあ、こまいかねぇ」
この一言が、この短い言葉が、すげー心に刺さるんです。
悲しみを乗り越えて、生きていこうと決めた人が言うセリフだと思います。

この言葉が意味するところは、ぜひとも観て頂いて堪能して欲しい。

最後に

この作品は、「戦争」がもたらした時代を背景に、たくましく生き抜く人々を描いた傑作アニメーションとして後世に残っていくことでしょう。

世間に戦争映画はたくさんあれど、笑って泣ける本作は、中盤までのゆるーいノリと、それ以降に始まる戦争とのギャップがすごくて、下手に反戦を叫ぶ映画よりも「平和っていいよね」と自然に感じられるかと思います。

アニメ版『ライフ・イズ・ビューティフル』といったところでしょうか。

当時の本土での暮らしもよく分かるし、学校の教材として用いても良いと思います。
戦争を知る世代が次々に亡くなっている今、我々知らない世代が残していくべきはこういう映画でしょう。

最後に予告編をどうぞ!

youtu.be


 楽しんで頂ければ幸いです!それではまたねーーー!!

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