★ さとりずむ ★

Amazonプライム・ビデオを中心とした映画レビューブログ。そのほかにも音楽や書籍、育児ネタなどの雑記もあるよ!

映画『ジュラシック・パーク』徹底レビュー!
映画『ミッション:インポッシブル』徹底レビュー!
映画『ミッション:インポッシブル3』徹底レビュー!
映画『オールユーニードイズキル』レビュー!
アニメ『ゆるキャン△』レビュー!

映画『この世界の片隅に』:昭和20年、広島・呉。わたしはここで生きている。

f:id:satorism:20180804153048j:plain(このイラストは差し替えるかもしんない)

おす!さとる(@satorism0321)です!

この時期、特に8月になると、ぼくはかつてこの国が経験した「戦争」のことを考えるようにしている。

 

ぼくの家族だと、航空機製造に携わっていた祖父は技師であったため戦場には行っておらず、祖母と子供たちと名古屋で暮らしていたらしい。昭和20年に起きた名古屋空襲のことは、当時2歳だったぼくの父の記憶にも残っているそうだ。

ぼくは2歳の記憶なんてないので、それだけ強烈な出来事だったんだろう。

そんな祖父母たちの生活がどんなものだったのか?と言う長年の疑問に、答えをくれた映画を今日はご紹介する!
舞台となる場所こそ違えど、当時の雰囲気は感じることができるぞ!

 

この世界の片隅に、うちを見つけてくれてありがとう。

f:id:satorism:20180804174720j:plain『この世界の片隅に』 2016年日本
オススメ度:★★★★★★★

片渕須直監督作品。

まさかの7つ星だ!!

これは見るべき。そうするべき。

太平洋戦争真っ只中の昭和19年(1944年)2月、広島・呉にある北条家へと嫁いだ主人公・すず。
物資の不足、食糧難、度重なる空襲、原爆投下、そして大切な人との別れを経験し、傷付きながらも懸命に生き抜く彼女の姿を描く。

戦争を題材にした映画というと兵士を主役に据えることが多いけれど、本作の主人公は(ちょっと天然気味の)普通の女性であり、舞台は戦場ではなく一般家庭においての日常である。

そう、これは(戦争のある)日常系アニメなのだ。
ある意味、家庭は「女たちの戦場」とも言えるね。

映画賞を総ナメ

f:id:satorism:20180804172827j:plain
この映画の原作は、こうの史代による同名コミック(双葉社刊)だ。
映像化にあたり、クラウド・ファンディングによって制作費が調達されたことも話題となった。

日本中で「君の名は」ブームが巻き起こっていた頃にひっそりと公開されたが、SNSや口コミでその評判が広がり、最終的にその年の映画賞を総ナメにしてしまったというレジェンドなアニメ。

ぼくは『夕凪の街 桜の国』(2004年)の頃からこうの先生の大ファンであり、本作の映画化が決まったときには嬉しい反面、不安も大きかった。期待値が高すぎるとガッカリすることが多いものである。

しかし、実際に鑑賞してみると「期待値をはるかに超えた」完成度で、戦時下における一般家庭の様子を描いたこの映画は、今後語り継がれるべき作品のひとつとなるんじゃなかろうか。

しかもまだ上映されている。
※2018年8月6日現在

600日以上を超えるロングランとなり、『ウエストサイド物語』(1961)の511日を抜き、史上2位をマーク。
ちなみに1位は『祈り~サムシンググレートとの対話~』(2012)で、上映期間1192日(!)なんだそうな。

ぼくの中では『タイタニック』(1997)かと思ってたけど、あちらは434日だったらしい。

 

登場人物紹介

北条すず

f:id:satorism:20180804174426j:plain

本作の主人公。旧姓・浦野。広島市江波から、呉の北条家に嫁ぐ。
絵を描くのが好き。鉛筆をギリッギリまで使い込む。軍艦を絵に描いて憲兵に怒られたりするドジっ子。

かわいい。

北条周作

f:id:satorism:20180804174913j:plain
すずの夫で、呉の鎮守府(ちんじゅふ)に勤める。
鎮守府とは、日本海軍の根拠地として艦隊を統括する機関のことを言う。

水原哲

f:id:satorism:20180804175333j:plain

すずの幼馴染。すずへの想いを秘めながらも結局実ることなく、海軍に入隊する。
気さくな性格で、誰とでもすぐ仲良くなれるタイプ。うらやましい。

黒村径子

f:id:satorism:20180804175522j:plain

周作の姉。夫の死後、実家に戻ってくる。
すずに対し、何かとイヤミを言う義姉である。

黒村晴美

f:id:satorism:20180804175613j:plain

径子の娘。軍艦に詳しく、すずに懐いている。

白木リン

f:id:satorism:20180804175829j:plain

遊郭「二葉館」の遊女。
原作では重要なキャラとして登場するが、本作ではエピソードをごっそり削除されている。
2018年12月に公開予定の、長尺版『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』では、リンのエピソードが盛り込まれるかと思われる。

さとる的おすすめポイント

プロローグ

物語は主人公すずの幼少期から始まる。

  • 昭和8年:海苔を届けに行く途中で「ばけもん」にさらわれる話
  • 昭和10年:草津の祖母の家で、天井から見知らぬ子どもが降りてくる話
  • 昭和13年:海難事故で兄を失ったばかりの同級生・水原哲に絵を描く話

の3つがプロローグとして描かれる。

一応本編への伏線となるので、ちゃんと見ておくとより楽しめる。
(予備知識なしの初見だと、ちょっとわかりにくいかも)
3つの中でも、昭和13年の水原哲のエピソードはとても美しく映像化されているので、そこにも注目して欲しい。

すずさん、嫁ぐってよ

f:id:satorism:20180804180001j:plain
3つのプロローグを経て、18歳になったすずが呉の北条家へ嫁ぐところから本編は始まる。

18って言ったら高校3年やぞ!?
舟木一夫もびっくりだわ(古い)

すずは縁談を持ち込まれ、初めて会った男と結婚することになるのだけど、当時は普通のことだったのだろうかね。

そういえば、ぼくの祖父母も見合いだったということは聞いている。
わずか18歳でお嫁に行き、いきなり家のことをすべて任されるなんて相当の苦労があったんだろうなぁ。

しかもイヤミな義姉がいるなんて(略

生きるために食べる

f:id:satorism:20180804181129j:plain
この作品の見どころの一つは、戦時下における一般家庭での暮らし。
従来の戦争映画ではなかなかお目にかかれない、一般市民の生活ぶりが描かれている。

配給制なので物資に乏しく、そこらへんに咲いている野草も食料にしちゃう。実にたくましい。

家族の食事について苦心する姿は、見ていてとても可愛らしく、応援したくなるぞ!

f:id:satorism:20180804180033j:plain
印象に残っているのが、お米を無理やりかさ増しする「楠公飯(なんこうめし)」。

鎌倉時代の武士・楠木 正成(くすのき まさしげ)が考案したとされる節米料理なんだけど、食糧難だったこの時代でさえ不味かったようだ(笑)

戦争中でもユーモアはあるんだよ

f:id:satorism:20180804175907j:plain
とかく日本の戦争映画は悲惨さを前面に押し出しすぎで、「ハイ!ここ泣きどころですよ!」みたいな演出が多いと常々感じている。

いや別にいいんだけどさ・・・なんかベタすぎてさ・・・w

本作はというと、戦時下でありながらも非常にユーモアのある「日常」が描かれている。
原作のこうの氏がインタビューで、「戦争中でも笑いはあった」と仰っていたのがとても印象に残っていて、その言葉通り、およそぼくらが考えていた戦時中のイメージとは違い、登場人物たちはよく笑っている。中盤まではコメディといってもいいくらいだ。

劇中、すずの義母のセリフに「みんなが笑って暮らせたらええのにね」と言うようなものがあるが、つくづくそう思う。
この時代を生きた人たちは、本当にたくましかったのだなぁ。

日常を切り裂く「戦争」の恐怖

f:id:satorism:20180804181306j:plain
当時の呉といえば、戦艦大和を建造した「東洋一の軍港」。

日本海軍にとって重要な軍事拠点であったこともあり、米軍によって複数回に渡り空襲を受けている。
本作中盤までは、苦労はありながらも笑いのある日々には「戦争」を感じさせなかったが、硫黄島が陥落した1945年3月以降は状況が一変し、突如「戦争」の恐怖が日常を切り裂いていく。

空襲シーンの迫力はすごい。アニメでも十分怖い。
当時を生きた人々にとって、いかに空襲が恐怖だったかを知ることができるんじゃなかろうか。

空襲が始まる辺りからテロップとして日付が出始めるが、これは度重なる空襲の数を示したものである他に、広島にとっての運命の日である、「8月6日」に向けて近付いていっていることを示しているかのようだ。

終戦を迎えて

f:id:satorism:20180804181337j:plain
この作品で最も印象に残ってるのは、玉音放送を聞いた直後のシーン。

周りの女性が口々に「やっと終わった」と呟くなか、すずが発する言葉がとても心に残っている。原作より引用する。

・・・何で?
そんなん覚悟のうえじゃないんかね?
最後のひとりまで戦うんじゃなかったんかね?
いまここへまだ五人も居るのに!
まだ左手も両足も残っとるのに!!
うちはこんなん納得出来ん!!!

『この世界の片隅に』下巻より引用


もちろん、彼女が戦争継続を望む好戦的な性格だったわけではない。

大切なものを失ったすずにとって、「自分なりに戦い続けること」で、傷付いた心を支え続けていたんじゃないかと思うし、どこかの誰かが勝手に始めた戦争に自分たちを巻き込んでおいて、勝手な言い訳で戦争を終わらせようとしたことに腹が立ったのだろう。

泣き崩れるシーンの捉え方は諸説あるが、政治的な意味合いが強そうなのでここでは省いておく。

最後に

すずさんが可愛い。それだけで何度も観られる(笑)

その他の登場人物たちも含め、こうの先生の温かいタッチが見事に再現されているし、背景もすごく綺麗に描かれている。デジタル彩色って本当に色が美しいなぁ。

コトリンゴの音楽もすごく素敵。特にエンディングテーマ。
オープニングにかかる、1968年のヒット曲『悲しくてやりきれない』のカバーも良い。
1992年の映画『シコふんじゃった。』でもカバーされていたが、この曲好きなんだよなぁ。

世間に戦争映画はたくさんあるけれど、笑って泣ける本作は、中盤までのゆるーーいノリと、唐突に始まる戦争とのギャップがすごくて、下手に反戦を叫ぶ映画なんぞより「やっぱり平和がいいな」と自然に感じられる。

アニメ版『ライフ・イズ・ビューティフル』といったところか。

シンプルにオススメできる。未見の方には是非とも観てもらいたい。


最後に予告編をどうぞ!

youtu.be


 楽しんで頂ければ幸いです!それではまたねーーー!!

【ブルーレイ】



【原作コミック】
  

【Kindle版】